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老人と愛犬のエッセイ

あたいはラッキー

今年で13歳になるメスのビション・フリーゼ。
近所でも可愛いと評判である。

今のご主人は、あたいの三人目のご主人である。
最初のご主人は今のご主人のご両親だった。
最初に父上が亡くなられ、そして母上が亡くなられた。

そして、居候の長男が二人目のご主人となった。
このご主人はアルコール中毒で、自分の食事さえもままならない。
最初はタクシーの運転手をしていた。
昼休みには、家に帰ってきて、近所に散歩に連れて行ってくれた。
散歩でのあたいの人気はすごいものだった。
特に小さな子から人気はすごいものだった

でも、母上が亡くなって監視の目がなくなるとお酒の量が増えていった。
この頃から、泥酔状態が続くようになった。

そして、突然亡くなってしまった。
もう家には、あたい一人ぼっちになってしまった。

その時にあたいの面倒をみてくれたのが今のご主人なのである。
でも、このご主人はいろんな問題を抱えていた。
だから、直ぐにご主人と暮らすと言いうことではなかった。

ひとりぼっちの生活

その頃、ご主人は別居生活中で小さなアパートに住んでいた。
もちろんペットなんか飼えるわけもなかった。
わずかな年金とタクシーの安給料でなんとか暮らしていた。

三日に一度だけ、あたいの食事の用意とトイレの掃除にやってくる。
ご主人はあたいと目を合わせないようにして、二・三度だけあたいの頭を撫でて帰って行く。
そして、またひとりぼっちになった。

家は狭くはなかったけれど、家から外には出られなかった。
散歩になんか連れて行ってもらえない・・・
そりゃ寂しいなんてものではなかったよ。
そんな生活が一月ほど続いた。
野良犬と同じようなものだった。

ご主人もかなり辛かったようだ
頭を撫でてくれるときの目がとても悲しそうだった
だから、逃げるようにして帰って行ったんだ

母上が生きていたときにも、ご主人は遊びに来てくれていた
あたいはご主人が大好きだった
あたいとご主人は大の親友だった

あたいをペットとしてじゃなく、友として扱ってくれているのが嬉しかった

なのに・・・今のご主人はきらいだ

ご主人との同居が始まった

野良犬状態になって一月たった頃、突然ご主人と暮らすことになった。

あたいの棲んでいた家は、廃墟のようになっていたので、住める状態ではない。
母屋のとなりに車庫を改造した小さな空き家があった。
そこで暮らすことになった。

そこに暮らしながら、母屋をリフォームすることにしたらしい。
だけど、お金がないから、少しずつ材料を買って直すのだという。
でも、タクシーの仕事をしながらでは体力的にも時間的にもきつい。

小さな家での暮らしは、結構厳しかった。
ベッドと食卓テーブルを置いたら、後は歩くだけのスペースしかない。

ご主人はその頃から作家を目指していたので、いつもパソコンの前に座っている。
だからあたいはいつもひとりぼっちだった。
もう、ひとりぼっちには馴れていたけどね。

ある夜の悲劇

ご主人はあたいを可愛がってくれた。
この不便な家に住むのも、あたいを一人にしてはおけないからだという。
ご主人も心が痛んでいたらしい。

なんとなく、幸せそうに暮らしていた。

でも、あたいの辛い記憶はなかなか消えなかった
野良犬のような警戒心を持っていた

夜はご主人の布団の上で一緒に寝ている
なんとなく警戒心があって、ご主人の傍では寝られない

あたいが寝ていると、おしりに何かが当たった
あたいの警戒心が発動した

ウー ワンワン

そう言ってガブリと噛みついた

それはご主人の手だった

ご主人は驚いて、手を引っ込め、返す手であたいを強く叩いた

キャン キャン キャン

あたいも驚いて悲鳴をあげた

その時のご主人は、あたいの声を聞いて、大変なことをしたと思ったみたいだった
野良犬状態だったから警戒心が強いんだと同情してくれた

それ以来、あたいは叩かれることはなくなった

でも、あたいの警戒心は無くならなかった
相変わらず、ご主人の手に噛みついていた

でも、あのとき以来、ご主人は手を噛んでも何もしなかった

黙って、かじるままにしていた

そうなれば、あたいも気が付いて、噛むのをやめて、その手を舐めた
ご主人はそれが嬉しくて泣きそうな顔をしていたよ

それから、ご主人の枕元で眠るようになった

続く2022/01/20

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